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オートバイ用ARスマートヘルメットLiveMapを開発したロシア企業、普及なるか

2017/01/16
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中年男性がスマートヘルメットを被っている写真

オートバイ用ARスマートヘルメットは、クールなコンセプトでありながらも、いまだ大衆市場には出回っていない。その訳は、開発にかかるコストと驚異的な複雑さだ。ARスマートヘルメットを携え知名度を上げたあのSkully社も、いまや活動を休止している。

この発明に身を捧げているAndrew Artishchev(以下アンドリュー氏)はまだ諦めてはいない。彼は、AR HUD(ARヘッドアップディスプレイ)を装備したオートバイ用ARスマートヘルメットを約一年で完成・販売できるとの期待を持っている。

戦闘機のパイロット達は、すでにF-35の開発したARヘルメットを活用している。装備されているHUDによって、自分の顔のすぐ近くからデジタル情報を得ているのだ。ただ費用はというと、40万ドルもかかる。しかしながら、スノーゴーグルに似たような効果をもたらすデジタルゲージを追加で装備した企業もいくつか存在する。

ロシア企業のオートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMap

ARスマートヘルメットにつきまとう困難

Skully制作のスマートヘルメットの画像

オートバイ界では、2016年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のために、BMWがHUDヘルメットの概念モデルを作り上げた。ただ、実際に発明する段階についてはあまり意欲的に表明していない。

一方で、クラウドファンディングで資金を調達していたことでも最もよく知られるARスマートヘルメットの先駆けSkully社は、倒産しただけではない。創業者たちは今、訴訟に直面している。調達した資金を、ストリップクラブなど本来の目的に反して使い込み、浪費したことが要因だ。

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なお新たに参入したNuVis社も、同様に失速しそうである。2015年11月以来、何の音沙汰もない。クラウドファンディングによる資金調達の手段を提供する民間企業Kickstarterで20万ドルを調達したにも関わらずである。

もし実際に提供を約束したHUD装備のヘルメットを実現するとするならば、とても苦労することになるだろう。現状では、Fusar社がある種の進化型デジタルディスプレイに取り組んでいるが、実際真剣にHUD装備のヘルメットを作ろうとしているようには見えない。(Fusar社は、計画の頓挫で痛い目を見たSkully投資者への補償をしている。)

オートバイ用ARスマートヘルメット、新星LiveMap

発明家であり、オートバイ愛好家なアンドリュー氏はLiveMap社を設立した。彼は個人的な資産60万ドルをかけて、GPS機能を活用できるHUDを搭載したバイク用ヘルメットを、一年ほどで作り上げようとトライしている。

彼は、2つのプロトタイプを作り出した。いくつかのトレードイベントで披露するために、2016年の初めには2作目をカリフォルニアに持ち込んだという。

オートバイ用ARスマートヘルメット開発ロシア企業、LiveMapの資金調達

アンドリュー氏とスマートヘルメットが一緒に映っている写真

4月にアンドリュー氏に初めて会った際には、ロシアで非常に人気が高かったというPosture Masterという以前の発明から得た利益で、R&D(研究開発)と2つのプロトタイプの資金調達したと話していた。

彼は当初、製品を市場に出すための投資資金1000万ドルを得たいと考えていた。以来300万ドルを集めて、「ある主要なモーター・ブランド」からのコミットメントを確立したとのことだ。どのブランドかは、機密保持契約により再び伏せられたままだった。また、文部科学省を含むロシア政府からのいくつかの資金の流れによってバックアップされてもいる。

LiveMapを向上させるためにはまだ700万ドルを残すが、アンドリュー氏は製品を何とかして市場にまで持ってくると熱心に主張してきた。

オートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMapの使用感は走行スタイルに問題

彼は親切にも、オフィスまでデバイスを届けてくれた。私は、ヘルメットを装着したライダーの感覚を味わってみるため、実際に自分で試してみた。ハードウェアはヘルメットの顎あたりの大部分を占める。だが、GPSナビゲーションの画面上の表示は、明るくクリアに見えた。

あくまで実物そっくりに再現したサンプルをお試ししているに過ぎないため、実際の製品を装着して走行した場合のシステムの使用感は伝えられないが、ウィンドウを通して見える道路上の表示は十分にシャープであると確認できた。例えるなら、ARスマートグラスGoogle Glassよりもすごい。走行中に目の前に浮かぶ情報に慣れるために、少し時間はかかるかもしれないが。

オートバイに乗っている最中に電話を取るのをよしとするような人は、個人的に全く考えられない。しかし、私の友人でもある多作のオートバイジャーナリストWes Silerが考えるには、GPSを搭載したHUDヘルメットはハンドルバーマウントと、走行中の方向を記憶する機能に優れているという。

たぶん、走行スタイルの問題なのだろう。都会での汚れた走行と、快適なビーチクルーズ。恐怖に支配される路地の走行と、ハンドルバーマウントのカップホルダーから飲み物を飲みながらの悠々とした航海。私のこれらの経験のどちらもが面と向かってあれこれ口出ししてくるが、長距離走行と単なる街乗りのどちらにも魅力が発見できる。

オートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMapの上部に装備されたプロジェクタから、バイザーに向けてグラフィックを投影する機能面

LiveMapスマートヘルメットを着用したときにディスプレイに出力されるAR画像

アンドリュー氏の最初のプロトタイプは、ヘルメットの上部に取り付けられたプロジェクタからバイザーに向けてグラフィックを投影する物だった。ただしその方法では、大部分が非実用的であった。2回目の開発ではこれらのユニットを顎のあたりに移動させ、上向きに投影させる形へと変更した。

グラフィックを歪めずに表示させるために、バイザーは部分的に平坦という珍しい形状をしている。アンドリュー氏は、見直しをすることでこの点は無くなるであろうと述べた。最終製品がライダーによって身に着けられる前の、最後の見直しであると思われる。バイザーは、投影される表示をキャッチしながら曇りを軽減する、シームレスなレンズを提供するだろう。

オートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMapの実用化に向けてハードウェアを組み込む予定

LiveMapスマートヘルメットを着用して運転している画像

実際のヘルメットは、インドネシアの工場からの重さ約3ポンドの無印カーボンモジュラーユニットを使用した、フリップアップのものを計画している。ちなみに同工場が生産しているブランドモデルについて、彼はNDA(機密保持契約)によりブランドの製作者に関する詳細を発表できないことを付け加えた。

ハード部分のアウトソーシングは、LiveMapがヘルメットの安全性を開発する上で重要な、負担の回避に役立つだろう。ユニットのデザインはすでに、アメリカ・ヨーロッパ・日本での安全規格に通っているという。それが本当ならば、LiveMapのハードウェアはアーキテクチャをいじらずとも、既存のヘルメットの形状にフィットする限りはアメリカの安全規格DOTの承認・取得には何の問題もないはずである。

アンドリュー氏は、HUDシステムのためのAndroidベースのソフトウェアが完成したことも伝えた。Nuance社からの音声認識と、カーナビの地図とリアルタイム交通情報を提供するNavteq社からのGPSマップが実現する。

彼が最終的にLiveMapヘルメットの実現をコンプリートした場合、Bluetooth接続と、Sony 4Kのライブストリーム機能付きアクションカメラを組み込む予定だ。カメラや興味のある場所についてなどはLTEで接続できるが、その間ナビゲーションの衛星信号は外れる。

オートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMapの価格は少々高め

法外に思えるかもしれないが、2,000ドル(約20万円)、事前予約で1500ドル(約15万円)ほどになる。

ヘルメットを実現するアイデアの中では、最も困難な点ではないだろうか。そのぐらいの金額を出すなら、品質の良い備品を頭のてっぺんからつま先に至るまで揃えることだってできる。地域情報コミュニティサイトのクレイグスリストで探せば、バイクを2台買うことだってできるのだから。

オートバイ用ARスマートヘルメットの、LiveMapの価格の正当性は対価に相応

アンドリュー氏が述べる価格の正当性は、このヘルメットひとつで、GPS・マウンティングキット・カメラも同時に手に入ることだという。私は同意しないが、これらのシステムの統合に独自性があるのは確かだ。

ヘルメットは、年間3万~4万個ほどの販売を見込んでいるという。私には本当にそうなるかどうかは分からないし、実際にこの件に関してはアンドリュー氏とメールでの議論を重ねた。ケチな私は知りたいのだが、あなたなら2,000ドルのヘルメットを買うだろうか?

オートバイ用ARスマートヘルメット、LiveMapの今後は世界へ拡大

LiveMapは、2017年の第2四半期に、第1陣として1,000個のヘルメットを提供予定だ。アメリカ、追ってカナダ・イギリス・オーストラリアと続く。2018年には、日本・台湾・韓国・ロシア・ドイツ・フランス・スペイン・イタリア・ギリシャ等にも販路を拡大したいと考えている。

私からすると、このヘルメットが実行可能なプロジェクトであるかとうかの答えを出すには、まだ疑問が残る。例えば、どんな流通システムがあるのか?顧客サービスは?マーケティングは?そして、おそらく最も重要なことがある。たとえ2,000ドルという高価格でも支払うことを選択肢にいれてくれるであろう、特別な安全性を求めるライダー達に、信頼できるブランドであると納得してもらうことである。

いずれにせよLiveMapは、少なくとも2017年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)までは我々のレーダーとなるだろう。この会社がオートバイのために市場へHUDとARをもたらすというのは、素晴らしいことだ。まだ誰も知らないが、アンドリュー氏は業界で先を越すだろう。

引用元
Can This Russian Inventor Finally Put Augmented Reality Into Motorcycling?

2016年10月18日関連記事追記
バイク用ARスマートヘルメット、SKULLYで360°見渡せる安全な運転を

DCA Design、サイクリストの命を守るAR機能搭載スマートヘルメットを開発か

2016年10月18日追記
ARスマートヘルメットはオートバイやサイクリストに留まらず、産業系スマートヘルメットを開発しているアメリカ企業、DAQRIが存在する。

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