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幻肢痛を軽減する治療にARを活用、スウェーデンの工科大学が開発

2017/03/07
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幻肢痛の軽減のためにARを用いた治療のセッションをしている写真

四肢の切断手術を受けた人が、もう存在しない腕や足に急性の痛みを経験する幻肢痛は、不可思議な病気だ。その痛みを治療するのは、難しい。しかし、ARを用いた新しい種類の医療は、もっとも扱いにくい幻肢痛を減少させるのに驚くほど効果的だ。

スウェーデンの名門工科大学Chalmers University of Technology(チャルマース工科大学)のMax Ortiz Catalan氏(以下カタラン氏)が、2014年に提案したAR治療法は、最初の非常に有望な臨床試験を完了した。チームは、他の治療法では効果が見られなかった慢性的な幻肢痛を持つ14人を選んだ。

画面上に重ね合わせて表示した手足を、実際に動かすセッションを実行

患者には、今はない手足をコントロールしていた筋肉の信号を検出する筋電センサーを装備。これらの信号は追跡、分析され、バーチャルな環境での動きにリンクされる。掌を開いたり手首をひねったりする動きが、画面上の四肢で行われる。

この測定が完了すると、患者のバーチャルな手足が、ウェブカメラのイメージ上に重ね合わせられる。ちょうど本当の四肢がある場所に表示され、ユーザーが四肢を動かす想像をすると、実際にその通りに動く。半月ごとの12のセッションの間、患者らはバーチャルの四肢でセンサーを使ってレースゲームの車を操縦したり、他にも様々なことを実行した。

ARを用いたセッション後に幻肢痛が軽減、さらなる改善も見込まれる

驚くべきことに12のセッション終了後、痛みの約半分が減少。そして、日常生活や睡眠の中断も同様に軽減された。鎮痛薬を服用していた4人の患者のうち2人は81%、薬を減らすことができた。半年後、病状の改善はまだ続き、それは治療が長続きする効果があることを意味した。

「特に患者が、過去に4つもの満足のいかない治療方法を続けたことを考えると、非常に励みになる結果だ。我々はまた、最後の治療に至る過程で、痛みが継続的に減少していくのを見た。セッションの回を増すごとに痛みが軽減された事実は、複数のセッションを用いて、さらなる痛みの改善が達成できることを示唆している。」カタラン氏は、プレスリリースで述べている。

ARによる治療法は不思議な印象を与えるが、有用なツール

ARを活用したバーチャルな手足を動かして痛みを和らげることが可能だとする考えに、もし奇妙だという印象を受けたなら、確かにその通りだ。しかし、幻肢痛はほとんど解明されていない現象であり、治療の有効性は時にその不可思議さと一致する。

もうひとつの問題は、幻肢痛によるかゆみ。手がないため、かゆい所をかきたいのにかけないのがどれだけ腹立たしいか、想像してみてほしい。幸いにも見つかったいくつかの解決法は、四肢の欠落した場所に、もう片方の四肢が映るように鏡を配置すること。そして鏡に映る四肢を掻くと、かゆみは消える。信じられないかもしれないが、このようなミラーセラピーはいつも効果があるとは言えないものの、方法を確立している。

ARによる治療法は、論理的なレベルのミラーセラピーのようなものだ。ARは、不可思議だが実際に生じる症状の治療に、有用なツールだと証明できる。次はより多くのテストを行い、足を失った人も含め30‌人の患者を選んだ。この臨床試験についての論文は、海外医学誌The Lancetに発表された。

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