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HoloLensが医療に変革、脳神経外科手術で患者の脳内をARで視覚化

2017/03/08
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神経外科の研修医、Shervin Rahimpour(以下:ラヒム医師)とAndrew Cutler(以下:カトラー医師)は2016年10月某日、脳手術のより効率的な方法を作り出すため、Duke immersive Virtual Environment(DiVE: アメリカデューク大学が開設した没入および相互作用の技術開発専用の研究および教育施設)の部長Regis Kopper(以下:カパー博士)、そしてエンジニアリングの修士生Yameng Liu(以下:リウ)氏と協力関係を結んだ。

カパー博士とリウ氏は、Microsoft HoloLensとして知られるヘッドセットを使って、脳室が正確にマネキンの頭部に重ねて表示されるシミュレーションを開発。神経外科医はまもなく手術中に脳の隠れた部分を見ることが可能になる。

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【医療】HoloLensのAR技術で、疑似体験療法を実践

「HoloLensができるまで、ARは非常に不安定だった。リアルタイムで環境の中にうまく物を登録できないという意味でね。AR/VRは医療に関して完全に新しい技術ではないが、過去の利用例は限られていた。90年代からの初期のVRの利用の1つは、実のところ疑似体験療法だった」と、カパー博士は語っている。

疑似体験療法は治療のために患者を彼らの恐れに向き合わせる心理学療法だ。たとえば、非常な高所恐怖症の患者は恐怖を克服できるよう、VR用のゴーグルを通して断崖に立つ疑似体験を繰り返す。

しかし、ラヒム医師とカトラー医師がカパー博士に話を持ちかけたとき、彼らはいつもやっているが時々厄介な手技である心室外ドレーンに取り組めるようなより複雑なシミュレーションに興味を持っていた。

【医療】HoloLensを使い、外科手術のシミュレーションが可能に

カトラー医師は次のように話している。「私たちが緊急でやることは頭蓋に小さな穴を開け、そこからこのカテーテルを髄液腔に通して髄液を排出させることだ。このアイデアは脳圧を直ちに低下させて髄液を新しい方向に流して頭部から外に出す。」

この手技は通常ごく普通におこなう手技だが、時に状態を悪化させることがある。カトラー医師は、従来の解剖学的ランドマークは特定の状況下では適切に機能せず、執刀医はカテーテルをどのように挿入すべきか推測せざるをえなくなると説明した。

しかしARを使えば、執刀医は潜在的に危険な当て推量での措置を回避できる。

ラヒム医師は、「これがユニークなのは、実際の環境を仮想環境と重ねること。それにより、同時に両方とやり取りできる」と述べた。

この場合、神経外科医は手技を行う前に実行したスキャン画像に基づいた、Microsoft HoloLensの画面に患者の脳内の脳室を視覚化できる。

この技術の開発プロセスはなお初期段階にある、とカパー博士は語る。ARを外科手術と統合させるコンセプトは実行可能であると証明されたが、このデバイスが単純なマネキンの頭部以外のほかの部位にもテストできるようになる前に技術の改良が必須だ。

「カテーテルの追跡には若干遅れがある。この点が改良されれば、私たちが持っているモデルにテストできるだろう。出来れば、今学年度末までにはしたいものだ」と、カトラー医師は語った。

【医療】HoloLensは、生まれたばかりで改良が必要だが潜在能力は高い

このプロジェクトはまだ初期段階だといっても、研究者と研修医は、どちらもこの可能性について前向きに捉えている。必ず問題が出てくるが、医療のおけるARの実装は続くだろう。

カトラー医師曰く、「この技術が進む先に期待している。私はハードウェアとソフトウェアの新世代が登場すると、それらは改良されているので他の方法や分野にすぐに取り組むことが出来ると思っている」

HoloLensはサイズが大きく、重量があり、視野が狭いことが医療への問題

カパー博士は次のように付け加えている。「他にもこのデバイスには改良すべき点がある。取り扱うにはまだ大きすぎる。重いし。だが、HoloLensと利用する上で主な問題は、視野が非常に小さいということだ。」

2017年1月11日追記
HoloLensの視野角は40度程度。

HoloLensを使用して、複数のデータを手術中に閲覧できることが医療へ貢献への一歩

神経外科学の順教授でカトラー医師とラヒム医師のアドバイザーでもあるPatrick Codd医師は、メールで次のように書いている。「私たちが開発した手技はまだその緒に就いたばかりだ。今後の改善点には、アクセスが簡単で、リアルタイムに、内視鏡ビデオ、患者のバイタルやMRI、CT画像処理を含む複数のデータを執刀医やチームに手術中流すことが可能にする」

HoloLensは、医療を学ぶ神経外科医や医学生たちの訓練用としても使用できる

ラヒム医師は、「シミュレーションは新進の神経外科医や医学生たち用のトレーニングデバイスとしても使用。彼らに新しく学習した手技を練習できる安全な方法を提供する」と説明した。

まとめ

これからは、失敗は許されない外科施術の分野にもますますARの利用が進むだろう。カトラー医師の言葉の通り、新しい世代になるほど技術は改善、改良されていく。今後の医療用ARの開発に注目していきたい。

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引用元
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HoloLens
Microsoft HoloLens | オフィシャル サイト

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