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ARゲームアプリSpellBound、米国の州とリハビリ医療が子ども達の未来を担う

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多くの7歳児がやるように、John Jack Haas-Pueblo(以下ジャック)君も、スマートフォンやタブレットでゲームをプレイして楽しんでいる。しかし、多くの子供たちがただ楽しむためだけにゲームをプレイしている中で、ジャックは2月に脳動脈瘤からのリハビリの一環としてゲームを活用している。

ジャックは、米ミシガン大学 Mott Children's Hospital(こども専用病院)に入院している。病院の理学・作業療法士は、ARゲームであるポケモンGOと、ミシガン州の都市アナーバーで開発されたアプリSpellBoundを活用している。子ども達は怪我と病気から回復するために、遊びを通して運動スキルの練習ができるのだ。

SpellBoundロゴの画像

最近のセッションでは、ジャックくんを担当する理学療法士Leah Hagamen(ハーゲマン)氏と作業療法士Donna Thompson氏(以下トンプソン氏)が、アプリSpellBoundを使って「Albert the Confused Manatee」という本を読んでいた。このアプリを通して、ジャックくんは右人差し指を使って、スマートフォン画面の特定の場所をタッチする練習をしている。世界中でも大きな動物とされているシロイルカ画面が映ったとき、ジャックくんは「うわぁ」と叫んだ。

少年のこれまで

病室でジャック君がARゲームアプリをプレイしている様子の写真出典: http://www.detroitnews.com/

ミシガン州カラマズーにあるBronson Methodist病院の救急救命室に彼が運ばれたのは、2月20日のことだった。母親であるRachael Haasさん(以下レイチェルさん)は、息子はインフルエンザにかかったのだろうと思った。救急救命室では、ジャックが動静脈奇形破裂による脳動脈瘤を患っていることを、ドクターが発見した。結果として生じる出血は、脳幹を脊柱に押し込み始めた。

彼は24時間以内に、2回の大手術を受けた。母親によると、ジャックはどちらの手術も生き延びたものの2~3日の間は昏睡状態に陥ったという。彼は起きた後でさえ、医者が言うところの「閉じ込め状態」になっていた。意識はあるのに、感じていることや思いを外の世界に向けて表現できない状態のことだ。もう回復の望みが薄いと考えた医師は、彼から生命維持装置を取り去ることを勧めたという。

かつて野球とサッカーが好きな少年であったジャックは、歩くことも話すこともできなくなった。頭を持ち上げる事さえできなくなってしまった。しかし、レイチェルさんはそれでも決して諦めず、処置を続行できるように他の場所を探した。親子はミシガン州の3カ所の病院を渡り歩いた後、5月にMottこども病院へと転院した。それ以来、ジャックは頭を上げられるようになり、物が握れるようになり、完全な文章を話すことができるようになったのだ。

「まだ筋肉運動の整合がついていないだけで、彼の持久力は本当に強靭だ。2~3週間ほど前には、以前と同じように喋るまでになった。彼がおとなしいのは、今や寝ている時か食べている時くらいだ。」レイチェルさんは言った。「たくさんのテストを行ったが、認知のほとんどが損なわれていなかった。脳と身体をつなぐ橋が、自力で治そうとしているかのようだった。」

病院におけるARの活用

スマートフォン上で3Dデジタルで表示している写真

ジャックはポケモンGOとSpellBoundを活用している時の方が、座ったり、テーブルの前でまっすぐ立ったりする訓練ができているという。理学・作業療法士がサポートする歩行練習やバランスボールに座るといった従来のエクササイズよりも、ARゲームのおかげでリハビリがはかどるようだ。

病院関係者によると、Mottこども病院はAR技術を活用して3年になるという。ポケモンGOやSpellBoundがリリースされるよりも前から活用している。リハビリに加え、手術前の子ども達を落ち着かせる為にも、AR技術が活用されている。

セッションの中では、理学・作業療法士とリハビリテーション技術者のJamie Mayo氏が、ジャックのリハビリに取り組んでいた。左手ほど動かすことのできない右手の訓練をするためにMayo氏のGalaxy S7を使って彼がゲームをしている間に、彼の頭と背中の姿勢にも注視していた。

たとえ運動失調症がジャックの運動スキルの精度を落としたとしても、彼が典型的な7歳児の熱意とエネルギーを持っていることは明らかだ。ポケモンボールを投げたり、スマートフォンの画面で本を読んで共感したりする様子から、それが見て取れる。彼は療法士の手順に従う間、楽しむことに最も熱心だった。

子どものリハビリにARを活用

幼児がタブレットを触っている写真

作業療法士のトンプソン氏は言う。「小児科で子どものリハビリをするには、ゲームを取り入れなければならない。子ども達にとっては、療法士の事情は関係がないのだ」担当する医師らは、療法の一環としてタブレット端末でのゲームを活用する。ジャックが、ストレッチや運動スキルのエクササイズに楽しんで取り組めるようにするためである。例えばトンプソン氏は、上を見上げる練習をしてほしい時には、タブレットを彼の目線の少し上の方に置くようにする。

いくらかの努力と集中の後、ジャックはスマートフォンカメラを使って、2枚の特別なSpellBoundカードをスライドさせた。すると、画面にARのトラとゾウが現れた。トラは吠え、ゾウは鳴き声を上げた。彼は動物の鳴き声を聞くために、画面をタップし続けていた。

ジャックは、タップしたい部分をタップできるまでしばしば挑戦を必要としたが、理学・作業療法士のサポートのおかげで最終的には常に成功していた。ジャックがタスクを完了したときはいつでも、療法士たちは喝采した。そして満面の笑顔を見せた。

ミシガン州を支えるAR

SpellBoundのアプリで本をカメラでかざすとスマートフォン上で3Dイラストが浮かび上がる

SpellBoundは、ALTality社のChristina York(以下ヨーク氏)が開発した最初のアプリだ。ポケモンGO現象が技術の主流を作る18ヵ月前、すでにARの可能性を信じていたヨーク氏は、2014年11月に会社を設立した。

「ARは私を魅了した。ARが解決を手助けできる問題は、たくさんあると思う。」ヨーク氏は述べた。アプリSpellBoundの成功を見た彼女は、小児科の患者のための技術に集中している。彼らが苦しみから気を散らすことができ、楽しめて、そして没頭できるよう手助けする技術だ。

アナーバーのSPARKという起業家のためのサービスの責任者Travis Linderman氏によると、「コワーキングスペースおよびALTalityが拠点を置いている「経済的原動力」のようなヨーク氏の一連の活動は、アナーバーでAR技術を作成している会社の全グループの一部だ。次の10年、技術を押し上げる一部であることに、アナーバーは位置づけられている。デトロイトにいる人々もまた、この一部だ。」

ミシガン州にAR技術を専門とする会社を持っていることは、今後数年の間に来るべき国の経済にとって、重要であり得る。IT分野の調査・助言を行うコネチカット州の企業Gartnerの予報によれば、2016年には190万台のAR・VRヘッドマウントディスプレイが売れる。2020年には、売上数は3990万台にまでうなぎ登りだという。

ミシガン州経済の将来を担うAR技術の可能性さえ、ジャックにとって気がかりなのは、SpellBoundで動くトラとゾウで遊べるかどうかだけだ。「本当にすごいと思ったよ。」彼はそう言った。

まとめ

手術や解剖学だけではなく、リハビリにも使えるAR。ミシガン州に会社を構えていることは今後の経済発展に重要であるが、州全体で企業をサポートすれば、より良いアプリが制作でき、州全土の病院にも迅速に伝達できて、市場を拡大できるのではないか。これは解決策であり問題作ではない。このARアプリに可能性を感じた記事だった。

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ライティング修行中。様々な可能性を秘めたARとの関わり方を考えています。ARの発展と共に、この社会がより良くなっていく事を期待しています。

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