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個人開発者・インディーは完全無料!Kudan社のSLAM技術によるARエンジンとは?

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Kudanと千葉悟史

2017年5月8日と9日に東京国際フォーラムで、ユニティ・テクノロジー・ジャパン主催のイベント「Unite 2017 Tokyo」が開催。2日間で60以上の総合開発環境Unityにおける基調講演や、2つのブースに別れて30以上の様々な企業が出展していました。

第一ブースエリアの中では、Kudan(クダン社)がSLAM(スラム)技術をベースにしたARエンジンのデモを展示。Kudan株式会社の千葉氏からARエンジンや施策などについて聞きました。

SLAM技術によるARエンジンについて

タブレット

──Kudan社のARエンジンの特徴はなんですか?

千葉氏 Tango(タンゴ)やHoloLens(ホロレンズ)に搭載されているのような特別なセンサーを使わずに、カメラだけで空間や平面を認識して、オブジェクトをスマホやタブレットの画面上に配置ができます。特別な端末は必要なく、一般ユーザーがお持ちのAndroid端末やiOS端末のスマホやタブレットで完全マーカーレスARを実現しました。

──特別なセンサーは使わないというと?

千葉氏 赤外線センサー等を使わず単眼でも3次元の環境認識ができる、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mappingの略:自己位置推定と周囲の地図作成を行う)技術をベースとしています。ポケモンGOのようなARと異なり、CGコンテンツがしっかりとその場所に張り付いて、寄ったり回り込んだりできるところが特徴ですね。

──すごいですね!

千葉氏 Kudanはイギリスに開発拠点があります。そこで研究・開発して完全な独自のアルゴリズムを実装した強みがあります。

──AR SDK(エーアールエスディーケー)も配布しているとか。

千葉氏 AR SDKではアプリとして開発しやすいように、現在のバージョンではまだ完全な3次元認識は実装していません。しかし、TangoやHoloLensなどのおかげで本格的なAR/MRのニーズが高まっていることもあり、iPhoneだけで、3次元の認識ができるようなエンジンのリリースの準備しています。

──ちなみに、iPhoneのどの機種からマーカーレス表示ができますか?

千葉氏 現状のAR SDKを使ってマーカーを使わずにパッと表示できるのは、iPhone4レベルの端末からできます。完全な3次元空間認識については、iPhone6での動作を確認しています。

──7年前のスマホでも環境認識できるんですね!

Kudanのロゴについて

Kudan ロゴ

──Kudan社のロゴはどなたがイメージして誰が描いたのでしょうか?独特で気になりましたので。

千葉氏 カナダのデザイナーさんですね。Kudanはイギリス生まれですが、社長の大野は日本人です。「くだん」は顔が人間、体が牛の日本の妖怪で、これが出現した時には「天変地異」を予言して去っていくという昔話があります。Kudanは業界に「天変地異」を巻き起こしていくぞ!という思いを込めてこのロゴを制作したそうです。

──体が牛で顔が人間ですか。面白い!

千葉氏 そうですね。体が牛なんですよ。

──体の背中部分に日の丸があるんですね。

千葉氏 はい、ユーモア溢れるロゴです。

普及における施策

タブレットの中に車

──ARエンジンを普及していくにあたっての施策を教えてください。

千葉氏 現状、スマホでオブジェクトをARで表示するにはマーカー型が主流ですが、本当の意味でリアルとバーチャルが融合するAR/MRを実現するにはそれでは不十分です。そのようなAR/MRを実装していくのであれば、TangoやHoloLensのようなものが一般的に普及するまで待たなくてはいけない風潮があると思います。しかし、Kudanのエンジンを使うことで、今の時点でもみんなが持っている端末でその一端を実現できます。一方、TangoやHoloLensが認知されたことで、AR/MRに対する使い道の新しい発想が生まれてきていると感じました。KudanのARエンジンを使って広いユーザーに届けていただければと思っています。

ARエンジンの提供は個人開発者・インディー向けに完全無料化!

千葉悟史

──ARエンジンを利用する場合の価格を教えてください。

千葉氏 個人と100万ポンド(約1億4000千万円以下)の年間売上高をもつ企業は、完全無料のライセンスでエンジンを提供しています。商用非商用のどちらでも利用が可能です。シンプルにマーカーを見たらコンテンツが表示されるだけでなく、面白く斬新なARのアプリを開発者のみなさんに作ってもらいたいと思っています。

──無料版で開発したアプリはデバイス画面の下にバナー広告だったり、画面中央にポップアップ広告がでてきたりすると思いますが、そのような仕組みでしょうか?

千葉氏 いえ、そのような広告は表示しません。ただし、完全無料バージョンだと、AR表示画面右下にKudanロゴのウォーターマーク(静止画像や動画の一部に透過している小さな図案や文字)がついてきます。それを削除するのであれば、年間1000ポンド(約14万円)必要です。

──なるほど!ARアプリを作ってみたい人からすると、気軽に利用できますね。

オススメのアプリ

UnityちゃんAR

──千葉さんが思うマーカーレスARを使ったオススメのアプリはなんですか?

千葉氏 「ユニティちゃんAR」はUnityさん公式のアプリで、Kudan AR対応のアップデートをしたばかりですので、ぜひお試しいただきたいです。2本指タップでKudanのマーカレスモードに切り替わります。あとは「Sayduck(セイダック)」でしょうか。

──Sayduckですか?

千葉氏 家具を仮想配置するアプリですね。日本でもバーチャルで家具を置くアプリが増えてきていますが、Sayduckは完全にマーカーレスARで家具を設置できます。これならユーザーがもっているスマホを使って、気軽にインテリアやイス、ベッドの配置が画面を介してできますよ。アプリを起動して椅子のオブジェクトをタップしたら、しっかりと地面に固定されて実物大で出てきます。とてもリアルに再現できるところがKudan ARエンジンを使った特徴です。

──マーカーレスで表示ができるんですね。

千葉氏 Tangoでは同様の家具配置アプリがいくつか出ていますが、このアプリですと一般のスマホで同じことができますね。

ARエンジンの利用企業や大学

──ARエンジンを活用しているのはどのような会社ですか?

千葉氏 Kudanはイギリス発祥の会社ということもあり、欧米の企業が先行して使っていただいております。運輸サービスのDHL(ディーエイチエル)、サイクロン式掃除機で有名なdyson(ダイソン)、自動車メーカーのFord(フォード)、飲料会社のNestle(ネスレ)やアメフトのNFL(エヌエフエル)などといった企業が、Kudanのサービスを利用しています。日本でも、昨年に博報堂と提携するなど、実績が出つつあります。

──大手企業が多いですね。

千葉氏 また、AR SDKのベースとなっている弊社のVisual SLAM技術については、AR/MRだけではなく、自動運転やロボティクスなどの分野での活用を国内外の大手企業や大学と一緒に検討しております。グローバルで見ても非常にユニークな技術なので、お問い合わせも多く頂いています。

──自動運転はYoutubeで拝見いたしました。ロボティクスって何をするのでしょうか?

千葉氏 工場や倉庫などの中で、ロボットが周りの環境から自分がどこにいるのかを認識し、次にどこに行けばよいかを自律的に判断して動くために、Visual SLAM技術が活用できます。この分野では以前からこの点についての研究が進んでいたのですが、Kudanの技術は実用的で精度も高く、注目されつつあります。

最後に一言

千葉悟史

──最後に、弊サイトへの訪問者に向けてKudan社のARエンジンについて、何かお伝えしたいことはありますか?

千葉氏 何かに特化した端末ではなくて、多くの消費者がもっているスマホで、より進化した形でのARができることが一番の特徴です。AR/MRを使ってどのような面白いことができるのか、そのアイデアはまだまだ少ないと考えています。VRでもまずインディーの開発者の方々が活用法を開拓していきました。Kudanが個人開発者・インディー向けにAR SDKを無料化した狙いもそこにあります。ぜひ、KudanのAR SDKを使っていただき、斬新なARアプリを世に出していただけたら幸いです。

──ありがとうございました!

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