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AR/VRに対応したスマートフォン ASUS「ZenFone AR」を試用機レビュー!

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ZenFone ARスマホ

Tango&Daydream 対応スマートフォンとして世界初となる、ASUS「ZenFone AR 」(ZS571KL) を試用することができたのでハードウェアスペックを中心にレビューします。なお、本製品はエンジニアリングサンプルのため、実際に日本で発売する製品と仕様が異なる可能性がある点に注意してください。

Tango、Daydream、Cardboard とは

「ZenFone AR」の詳細に進む前に、TangoDaydreamCardboard の違いについて確認しておきましょう。

Tango

Tango はスマートフォンで高度なAR(拡張現実感)を実現するためのプラットフォームです。下記の動画の 8:35~に主な機能のデモがまとまっていますが、非常に高いレベルのARが実現できていることがわかります。

筆者は昨年このデモを間近で見て大変感銘を受けました。

Tango のコア機能としては、モーショントラッキング(Motion Tracking)、深度認識(Depth Perception)、空間記憶機能(Area Learning)があります。これらをモバイル端末で実現するためには、専用のハードウェアが必要です。執筆時点の2017年5月15日で Tango に対応した国内入手可能な機種は、「ZenFone AR」を除くと Lenovo Phab 2 Pro の1機種のみです。

Daydream

Daydream は、Androidスマートフォンで高いクオリティのVR(バーチャルリアリティ)を実現する仕様です。詳細は Android Compatibility Definition Document の Virtual Reality の項で説明されていますが、一部を抜粋すると、

  • 少なくとも2つ以上の物理CPUコアを持たなければならない
  • 少なくとも 3840 x 2160 @ 30fps-40Mbps の H.264 動画のデコード(再生)ができなければならない
  • 少なくともFull HD (1080p) の画面解像度をもつディスプレイを持たなければならない。Quad HD (1440p) 以上を強く推奨
  • 4.7″ から 6″ の画面サイズでなければならない
  • VRモードでは少なくとも 60 Hz 以上で画面を更新しなければならない

(日本語訳は筆者による参考訳のため、正確な内容は原文をご参照ください。)

など高いスペックが要求されています。これらを満たしたスマートフォンは記述時点では4機種発売されています。なお、PC向けVRで実現されているポジショントラッキング(自分の位置や姿勢に応じた映像が表示される)機能は利用できません。

Cardboard

Cardboard は、安価で手軽にVRを体験するために定められたスマートフォン向けのビューア(ゴーグル)です。詳細な仕様も公開されており、誰でも作製することができます。多くの企業から安価なビューアが発売されており、iOS向けの開発キット(SDK)も公式に提供されています。手軽な分、Daydream と比較するとVR体験は劣ります。

「ZenFone AR」をレビュー

それでは、「ZenFone AR」における各機能をAR/VRを中心に見ていきましょう。

外観

まず全体的な大きさから。「ZenFone AR」のディスプレイには5.7インチの Super AMOLED が搭載されており、解像度は2560x1440ピクセルと Daydream の推奨仕様を満たしています。

ZenFone ARのディスプレイ側

「ZenFone AR」のディスプレイ側。

 

本体の大きさは、iPhone 6 Plus とほぼ同じですが、ディスプレイは iPhone 6 Plus と比較すると、0.2インチほど大きくなっています。

ZenFone AR (左) と iPhone 6 Plus (右) の比較

「ZenFone AR」 (左) と iPhone 6 Plus (右) の比較。

 

「ZenFone AR」では主に外周部から熱を放出する仕組みとなっているようで、長時間負荷の高いアプリケーションを実行すると外周部から熱くなっていきます。そのため他のスマートフォンと比べ熱くなっていると感じやすいと推測されます。

Tango

「ZenFone AR」における Tango の機能について見ていきます。Tango は、通常のスマートフォンで動画を撮影するような形で利用します。ゴーグルは利用しません。画像は、プリインストールされた Tango アプリで筆者の部屋を撮影したものです。床面に草が生えているような表現ができており、トラッキングも非常に安定しています。

2視点で撮影しているが床面に張り付くように草が生えているような表現が実現できている

2視点で撮影しているが、床面に張り付くように草が生えているような表現が実現できています。

 

また、Matterport Scenes というアプリで複数の部屋をスキャンし、部屋を俯瞰するように表示したものを下記に示します。従来技術でも通常のカメラ画像のみを用いてこのような画像を作ることはできましたが、計算に数時間かかったり、撮影の仕方に工夫が必要だったりなどの課題がありました。「ZenFone AR」ではリアルタイムにプレビューしながらこのようなデータが容易に取得できることが確認できました。なお、対象物の色や表面の反射具合によりスキャンのしやすさは異なります。白い対象物であれば、2~4m、黒い対象物であれば1m程度まで近づく必要がありました。

Matterport Scenes による3Dスキャン。短時間でこのようなスキャンが可能。スキャンしたデータも歪みが少ない。

Matterport Scenes による3Dスキャン。短時間でこのようなスキャンが可能。スキャンしたデータも歪みが少ないです。

 

このような機能は、裏面に搭載されている3種類のカメラで実現されています。

ZenFone AR に搭載された3種類のカメラ

「ZenFone AR」に搭載された3種類のカメラ。

 

上記の画像は公式の動画から確認ができます。

発熱は?電池の持ちは?

Tango Unity SDK を利用して、シンプルな Tango 対応アプリケーションを作成してみました。単純なものであれば本体が急激に熱くなるということはなく、通常のARアプリケーションであれば1~2時間程度は電池が持ちそうです。

Unityを利用して作成したシンプルなアプリ

Unityを利用して作成したシンプルなアプリ。

より難しい条件での動作

Tango の機能は屋内での利用が想定されています。ここで想定外の利用方法となりますが、屋外での利用はどうでしょうか。先ほど利用した Matterport Scenes を用いて屋外でのスキャンを行ってみました。

屋外でTangoを利用した場合、直射日光が当たっているような場所ではうまく測定できない(メッシュになっている部分)が、日陰や曇りの場合、近距離(1~2m)程度は計測ができた。

屋外で Tango を利用した場合、直射日光が当たっているような場所ではうまく測定できませんでした(メッシュになっている部分)が、日陰となっている部分は近距離(1~2m)であれば計測ができました。

 

直射日光が強く当たるような場所でこそ、うまくスキャンすることができませんでしたが、日陰であれば屋外でもある程度動作が期待できるようです。ポイントクラウド(ポリゴン化せず測定した各点を表示したもの)も直射日光の当たらない部分ではきちんと作成することができました。

ポイントクラウドによる3D表示例。簡単にこのようなデータが取得できることに驚く。

ポイントクラウドによる3D表示例。簡単にこのようなデータが取得できることに驚きました。

暗い場所では?

暗い場所での動作も確認してみました。暗すぎる場所では「暗すぎます」との表示がでて、利用できないことがわかります。

暗い場所ではうまく動作しないようだ。

暗い場所ではうまく動作しないようです。

 

Daydream

続いて Daydream についてみていきます。上述の通り、Daydream には高いスペックが求められますが、「ZenFone AR」は、Qualcomm® Snapdragon™ 821 (クアッドコアCPU)、画面解像度は 2560x1440 など必須条件を上回る仕様となっています。また、高パフォーマンスVR機能をサポートすることを示す android.hardware.vr.high_performance 機能が有効になっていることも確認できました。

高パフォーマンスVR機能をサポートすることを示すandroid.hardware.vr.high_performance 機能が有効になっている。なお、adb shell pm list features コマンドで確認した。

高パフォーマンスVR機能をサポートすることを示すandroid.hardware.vr.high_performance 機能が有効になっています。なお、adb shell pm list features コマンドで確認。

 

Daydream の利用には専用のヘッドセットが必要となります。本記事の執筆時点では、「ZenFone AR」開発元の ASUS社からは専用ヘッドセットのアナウンスはないため、今回は Daydream View を利用して確認を行いました。

Google Daydream View は、Daydream 向けに開発された Google 公式の VR ヘッドセットです。なお、Daydream View には操作のために専用の無線接続のコントローラが付属します。技適マークの記載がないため、シールドルーム内で動作を確認しました。

Daydream View と付属するコントローラ

Daydream View と付属するコントローラ。

 

Daydream View に「ZenFone AR」を取り付けた場合は、若干ディスプレイ部分が上部にはみ出す形となります。したがって、若干画素が犠牲になってしまうものの視野角は Daydream View が実現できる最大まで得られそうです。前述のように Daydream はポジショントラッキングがサポートされておらず、Daydream View でもカメラ群を覆い隠すようになっています。また、Daydream の初回起動時にも歩きながら使用しないようにとの注意が表示されます。

Daydreamアプリは座った状態での利用が想定されている。

Daydream アプリは座った状態での利用が想定されています。

 

では実際のアプリはどうでしょうか。すでに多数の Daydream 対応アプリが Playストアに公開されており、簡単に試すことができます。

両眼立体視になっている。コントローラーで操作を行う。コントローラー単独で傾きだけでなく上下左右の移動もおおよそ取得できるようだ。

Daydream のスクリーンショット。両眼立体視になっています。コントローラで操作を行う。コントローラ単独で傾きだけでなく上下左右の移動もおおよそ取得可能です。

 

実際にいくつかのアプリケーションを利用してみると、遅延は全く感じられなかったほか、ディスプレイのドット感も注意しないとわからない程度となっており、非常に高い没入感があり驚きました。頭のポジショントラッキングこそサポートされていませんが、コントローラについては、傾きだけでなく、画面上で上下左右にも多少動かすことができます。Daydream は Arm model とよばれる数学モデルを提供しており、アプリ開発者は内蔵の加速度センサおよび角速度センサの値から予測した肩、肘、手首およびポインタのおおまかな位置と向きを利用することができます。「ZenFone AR」の国内発売時には、Daydream に対応したゴーグルの発売を期待したいところです。

Cardboard

「ZenFone AR」の箱は簡単な組み立てで Cardboard としても利用できるようになっているため、Daydream 対応のゴーグルを用意しなくても、すぐにVRの体験が可能となっています。

ZenFone AR の箱が cardboard として利用できるようになっている

「ZenFone AR」の箱が Cardboard としても利用できるようになっています。写真ではレンズがついていませんが、利用時には付属のレンズを取付けます。

 

ですが、VRの体験としては、Daydream のほうが格段に優れるため、可能な限り Daydream の対応環境を用意したいところです。

Tango と Daydream の同時使用の可能性は?

「ZenFone AR」は、Tango と Daydream の両方を世界初で対応したデバイスです。ところで、この2つの機能は同時に利用できるのでしょうか。そこで、VRゴーグルのハコスコを加工して AR メガネ的に利用することを試みました。

ZenfoneARのカメラ群が利用できるようにハコスコを加工

「ZenFone AR」のカメラ群が利用できるようにハコスコを加工。

 

現在、Tango 向けには Tango SDK、Daydream/Cardboard 向けには Google VR SDK が、それぞれ独立して提供されています。したがって、既存の Tango アプリをゴーグルのような形で利用しても 自動的に Daydream の機能が有効になることはありません。プリインストールされた Tango アプリをこのようなスタイルで利用した場合、カメラでとらえた映像がディスプレイに表示されるまでのレイテンシ(遅延時間)が100~150ms(独自の計測による)程度あり、長時間利用は厳しそうでした。今後、Daydream と Tango の機能が統合されていくことに期待したいところです。

「ZenFone AR」が起爆剤となるか

これまでは、Tango、Daydream とも対応機種がほとんどなく、国内の注目度もあまり高くはありませんでしたが、今回試用した「ZenFone AR」では、Tango、Daydream の両方について、それらが持つ高い機能がしっかりと安定して動作することが確認できました。また、先日開催された Vision VR/AR Summit 2017 のキーノートで、Google の Nathan Martz 氏が、最新の Unity 5.6 で Daydream のネイティブ対応を、今年後半にリリース予定の Unity 2017.2 で Tango の Unity のネイティブ対応を表明しています(現時点でも Unityでの開発は可能)。同氏の発表は 1:56:34~で確認できます。

これにより、Tango、Daydream のソフトウェア開発の敷居もさらに下がり、多数のアプリケーションがリリースされていくことが期待されます。「ZenFone AR」の国内発売が大変待ち遠しいです。

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